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平成19年度推薦入試の小論文試験問題

注意事項
1 解答は,すべて解答用紙に縦書きで記入しなさい。【日本語日本文学専攻のみ】
1 解答は,すべて解答用紙に横書きで記入しなさい。【日本語日本文学専攻以外】
2 解答用紙は2枚あるので,どちらかを下書きとして使用してよい。
3 受験票とこの問題用紙は持ち帰ってください。

  1. 文学科日本語日本文学専攻 
    [課題] 次の文章を読んで、後の問いに答えなさい。

     【 問題文は省略します。 】
     
      (藍川由美『これでいいのか、にっぽんのうた』【文春新書】より【「はじめに」の 3頁2行〜5頁11行, 6頁5行〜7頁4行, および 7頁15行〜9頁3行 】。一部表記等を改めたところがある。)

     注1 『梁塵秘抄(りょうじんひしょう)口伝集巻第十一』(注3)からの引用
     注2 郢曲(えいきょく)=声楽の一種
     注3 『口伝集巻第十一』=別名を『郢曲抄』ともいう音楽書。著者は不明だが、梁塵秘抄とほぼ同時代のもの。
     
    問一 ――線部【さらさらと常のこと葉をいふ如く謡ふべし。】を現代語訳しなさい。
    問二 日本語の歌の発音はどうあるべきかについて、問題文を参考として、あなたの考えを八百字以内で述べなさい。

    【解答例等】

    問一(10点)
      「ふだん話しているような自然な発音で詞を歌いなさい」(原文)
      採点基準:「常のこと葉」,「如く」,「べし」がそれぞれ適切に訳せていること。直訳も可。
    問2(90点:18点×5人)
      略
      採点基準:長文の文章表現力を問う。具体的には,問題文の要旨が理解できているか,論旨に矛盾がないか,文字表記や文法上の誤りが無いかなどを見る。
     

  2. 文学科英語英文学専攻 
    [課題] 次の文章を読んで,後の問いに答えなさい。
     
     社会の高度化にともなって,テクノストレスといった現象も現れている。これは二つの症状があり,ひとつは新技術を使いこなせないので不安やイライラ,嫌 悪感をおぼえ,体の不調を訴えるようになるテクノ不安症である。もうひとつは新しい機械にのめり込み,人間関係が煩わしくなって社会感覚も失われていくテ クノ依存症である。
    (渡辺茂・須賀雅夫 『システム工学とは何か』) 

    問 文中に述べられているテクノストレスについて,あなたの考える対策を800字以内で述べなさい。
    【解答例等】(解答のポイント)
    • 社会の高度化に伴うテクノストレス現象についての問題を的確に把握しているかどうか。
    • 自分の主張点を明確にし,自分なりの対策を提示しているかどうか。
    • 文章の構成力があるかどうか。
    • 高卒程度の語彙力,及び日本語表現能力があるかどうか。
    • 字数が適当かどうか。

    【「英語リスニング」について】
     英語英文学専攻では,小論文のほかに英語リスニングを実施しています。これは,高等学校卒業程度の英語聴解力を有し,英語で行われる本学の一部の講義を理解できるかどうかをみるものです。
     問題は公開していませんが,テープの内容について問う問題や書き取り等,一般的なリスニングの問題です。

  3. 生活科学科食物栄養専攻 
    [課題]
     世界に誇る長寿国である我が国においても,近年は「健康寿命」を重要視するようになってきています。
     「健康寿命」の意味,そしてそれを重要視する理由について,あなたはどのように考えますか。図を参考にして,800字程度で述べなさい。

        注:平均余命とは,x 歳ちょうどの者のその後の生存年数の期待値

      (「平成18年版 国民生活白書」内閣府ホームページ版から作成。一部,図の体裁を改めたところがある)
    【解答例等】
     《健康寿命》図から,1989年から2004年までの65歳時点での男女の平均余命は年々延びてきており,1.99年(男),3.33年(女)の延びが見られる。
     一方,入院したり,1か月以上就床したりせず,日常生活に支障を生じる障害を持たないで生活している無障害平均余命も延びてきているものの,1.43年 (男),2.14年(女)であり,平均余命の延びよりも短い。特に,2001年から2004年の期間には,無障害平均余命はむしろ短くなっている。
     以上のようなことから,「健康寿命」とは,「生活の質」(QOL: quality of life)や健康の質を維持し,心身ともに健康で自立して生活できる期間である。単に生命を維持させただけの長寿,つまり生物としての延命である平均余命 の長さに着目するのではなく,一人一人が人間として,健康で幸福に満足して暮らせることが大切であるという考え方である。
     《重要視する理由》健康寿命を維持するためには,病気や障害の原因となる危険因子が少ない状態(生活習慣病,肥満などでないこと),認知面の 機能を良好に保持している状態,身体運動面の機能を良好に保持している状態(家族や友人からのサポート,規則正しい睡眠など),人生に対する積極的な関与 などがある。これらの要素は相互に関連しあっているので,総合的に維持することが求められる。食生活では,特に,バランスのとれた食事,日本型食生活,地 産地消,安全・安心な食事を心がけることが必要である。また,適度な運動をすることも必要である。
     これらを通して,一人一人が自分らしく幸福に暮らし得る「健康寿命」を延長する努力をしていくことによって,病気や障害による社会的な負担を減らし,日本の将来の活力ある“社会づくり”が可能になる。

  4. 生活科学科生活科学専攻 
    [課題]
     幼児にとって遊ぶことはどのような意義があるか,遊びの例を3つあげながらあなたの考えを800字以内で述べなさい。
    【解答例等】
    @「幼児の遊び」として適切な例が3つあげられているか,
    A「幼児にとっての遊ぶことの意義」について,自分自身の考えが適切に述べられているか,
    を評価の基準とする。

    @《幼児の遊びの例》の例
    • 大人に助けられて遊ぶ……公園で大人の膝にのせてもらいながらブランコにのる。
    • 同年代の子どもと遊ぶ……砂場でままごとあそびをする。
    • 年代の異なる仲間と集団で遊ぶ……かくれんぼをしてあそぶ。
    A《幼児にとっての遊ぶことの意義》の例
    • 遊びを通して,好奇心や探求心を発揮しながら,運動の能力や知的な能力を発達させる。
    • 友達とかかわりながら遊ぶことで,社会性が身についたり,自己表現のしかたや相手を思いやる気持ちが育つ。
    • 体を動かして遊ぶことで,不安や緊張をときほぐし,精神的な安定をもたらす。

  5. 第一部商経学科(推薦・ 社会人)  
    [課題]

     最近,ホスピタリティ(思いやり,もてなし,他人へのやさしさ)といった言葉が観光行政方面で流行しています。これに関する資料1)〜3)を読んで,後の問いに答えなさい。

    資料1)鹿児島市の観光戦略
     本市が国際観光都市としてさらに発展していくためには,まちに魅力があることはもとより,東アジアをはじめとする海外や国内各地から訪れた方々が,鹿児 島に愛着と誇りを持つ市民のもてなしの心にふれて,温かい気持ちになれること,まちがきれいで住みよいこと,そして外国人観光客や高齢者の方々が一人でも 安心して歩けることなどが大切です。
     今後は,市民一人ひとりが地元のことをよく知り,自信と誇りを持って紹介,案内できるような取組みを進めるとともに,観光鹿児島を支える人材育成に関係 機関等とも連携して取り組みます。また,来訪者が一人でも安心・安全にまち歩きを楽しめる,わかりやすいまちづくり,美しく快適なまちづくりを推進しま す。そして,ソフト・ハードの両面にわたるこれらの取組みを通して,市民全体でようこそ鹿児島へと心から“歓迎”する,「ホスピタリティに満ちた鹿児島」を醸成*1します。
      *1 醸成 徐々につくりだすこと
    (「鹿児島市観光未来戦略」第4章「観光振興の基本方向」)   


    資料2)鹿児島県の観光振興計画
     観光関係者と県民が一体となって観光客を温かく親切に迎え,良質のサービスを提供することにより,観光客が再び訪れたくなるような観光地づくりを進めます。
     このため,県民をはじめ,観光事業者や関係団体・業界,市町村,県が一体となって,県民のホスピタリティの醸成や観光地の美化等に取り組む「観光まごころ県民運動」を展開するとともに,観光事業者・従業員等に対する研修会の開催や啓発活動等により,サービスの質の向上に努めます。
    (「かごしま新観光戦略21」第6章第1節のU)  


    資料3)南日本新聞社説
     JR九州が昨年10月から今年3月まで実施していた観光キャンペーン「大分VS鹿児島」アンケートの最終集計がまとまった。
     アンケートは,両県を訪れた宿泊客に4項目を5段階評価で回答してもらう形式だ。集計の結果,「温泉」「自然風景」「ホスピタリティ(もてなし)」の3項目で鹿児島に軍配が上がったが,肝心の「食」は僅差(きんさ)で大分が勝った。 (中略)
     県民が不得手とされるホスピタリティで 大分に勝ったことは,観光従事者には朗報だろう。県が2004年に実施した観光客へのアンケート調査では,県内の観光サービス従事者の接客態度が悪いとい う意見や,一部のバスやタクシー運転手の対応の悪さを指摘する声も挙がっていた。それだけに,観光従事者らの自信につながる結果ではないか。
    (南日本新聞,2006年5月16日付)   


    問1
     資料1)は鹿児島市の観光戦略を述べたものです。市は,観光客を「心から歓迎するホスピタリティに満ちた鹿児島を醸成します」と宣言しています。
     この「ホスピタリティ」の醸成はいかにしておこなわれるのでしょうか。それは「教育」によってつくりだせるものなのでしょうか。あなたがこれまでに受けた「教育」の体験をふまえて論じなさい。

    問2
     資料2)は鹿児島県の観光戦略を述べたものです。県は,全県的なホスピタリティの醸成とともに,観光関係者による「サービスの質の向上」を訴えています。
     さて,ホスピタリティとサービスの違いに注目しましょう。サービスは語源的に「奴隷的奉仕」と重なり,ホスピタリティは語源的にホスピタル(病院)と同根で「困った人への援助」と重なります。
     それでは,サービスとは異なるホスピタリティはどのように表現すればよいのでしょうか。具体的に例をあげて論じなさい。

    問3
     資料3)は南日本新聞の社説です。この社説は,ホスピタリティを鹿児島県民にとって不得手なものと見なしています。もちろん,それはひとつの見方ですが,県民のあいだにはまた別の見方も存在します。すなわち,「鹿児島県民はとても親切」というものです。
     あなたは,この二つの見方のいずれに,よりリアリティがあると思いますか。あなたの考えを自由に述べなさい。

    【解答例等】
    問1)[教育の可能性について,解答は肯定・否定のいずれでも可。ここでは肯定的解答の例を示す]
     思いやりの心は学校での教育によっても醸成可能だと思います。
     たとえば,私たちはこれまでも学校教育のなかでボランティア活動に励むように指導されてきました。無償で人助けをするのは善いことだし,苦しくても楽し かった,うれしかったという貴重な体験ができました。この活動をとおして,人にやさしくなりたいという善意の気持ちが育っていったような気がします。も し,このような教育を受けなかったら,人生の勝ち組に回るために他人を踏み台にする利己心ばかりが大きくなっていったかもしれません。
     したがって,人にやさしくする態度・姿勢も教育可能であり,人へのやさしさを善しとする精神も同時に育みうると考えます。

    問2)
     たしかに,サービスは形として教えやすく,また学びやすいかもしれません。しかし,形ばかりのサービスはその浅さが簡単に見破られてしまいそうです。だからこそ「真心をこめたサービス」といったフレーズが宣伝文句に用いられたりします。
     その点,ホスピタリティは「ことさら」な表し方を必要としません。というより,さりげなく示されるべきものなのです。そのさりげなさが「サービス」に深みを与えるのです。
     とすると,観光関係者はその「さりげなさ」を学ばねばなりません。それは一種の演技ですが,習得不可能のものではないでしょう。鹿児島県民は日常的に親切さをさりげなく表現することを学ばねばなりません。

    問3)
     私は南日本新聞の社説に賛成します。鹿児島県民はホスピタリティが不得手です。そして,それはまさしく県民が自分たちでは「互いに親切」だと思っている ことと連結します。つまり,二つの常識は両立するのです。すなわち,身内や知り合い同士では「親切」の交換をしていても,それは互いの関係が身内や知り合 いであることに由来します。しかし,よそものに対しては「自然な形」では親切が発揮できません。親切を表現するときは,「ことさら」親切を装ったりしま す。親切の押し売りの形です。よそものはそのことを指摘しないのが普通ですので,県民は相手が喜んでいると勘違いし,無反省のまま自己満足にひたります。

  6. 第二部商経学科(特別推薦)  
    [課題]
     小資源国である日本にとって,日本製品が国際競争力を持ち,戦後の高度経済成長を達成したのは中小工場の加工技術やそこで働く熟練工の技能によるものが大きい。東京都大田区はそのような中小工場を多く抱える地域である。
     大田区の中小工場に関するグラフと中小工場の経営者が登場するマンガを参考に,日本の中小工場の現状について述べ,さらに,このような中小工場が今後進むべき道についてあなたの考えを書きなさい。

    グラフ1

    グラフ2
      (東京都大田区産業経済部産業振興課 「平成12年工業統計調査報告」,「平成15年工業統計調査報告」より作成)

    《マンガ》

      【省略】

      (さいとうたかを 『別冊ビッグコミック ゴルゴ13シリーズ No.152 』 「龍への供物」,小学館2006年7月 より抜粋)
    【解答例等】
     中小工場の工場製品出荷額,工場数ともに平成15年はやや持ち直しているものの減少傾向にある。その原因は労働者コストが安い国(主に中国を始めとする アジア諸国)で安い製品が作られていることが大きいと思われる。日本の工場を支えてきた,次世代技術や熟練工の技能の海外流出が危ぶまれている。
     今後,日本の中小工場が進むべき道について。まず,技術に関してはさらなる発展を図ると同時に,海外への流出を防ぐことが必要である。また,熟練工の技 術の継承もかかせない。そのためには体力のない中小工場の努力だけでは困難であり,国の政策や大企業の協力が不可欠である。

鹿児島県立短期大学/教務課/入試情報過去の問題