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平成20年度推薦入学の小論文等試験問題

注意事項
1 解答は,すべて解答用紙に縦書きで記入しなさい。【日本語日本文学専攻のみ】
1 解答は,すべて解答用紙に横書きで記入しなさい。【日本語日本文学専攻以外】
2 解答用紙は2枚あるので,どちらかを下書きとして使用してよい。
3 受験票とこの問題用紙は持ち帰ってください。

  1. 文学科日本語日本文学専攻
    小論文
  2. 文学科英語英文学専攻
    小論文 
    [課題]  以下の例に示すように,多くの日本文学の作品が英語に翻訳され,海外に紹介されています。
     
    [A]  国境の長いトンネルを抜けると, 雪国であった。(川端康成『雪国』)
    [A′]  The train came out of the long tunnel into the snow country. (Edward Seidensticker訳)
    [B]   親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。(夏目漱石『坊っちゃん』)
    [B′]  Ever since I was a child, my inherent recklessness has brought me nothing but trouble.(Alan Turney訳)
    [C]   親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。(夏目漱石『坊っちゃん』)
    [C′]  A great loser have I been ever since a child, having a rash, daring spirit, a spirit I inherited from my ancestors.(Umeji Sasaki訳)

      [A′]は,川端康成著『雪国』の冒頭文の英訳で, [B′][C′]は,夏目漱石著『坊っちゃん』の冒頭文の英訳です。 ただし,[C′]は日本語母語話者による英訳です。
     例文を参考にして,翻訳はどのような点で難しいのか,また良い翻訳とはどのようなものか,あなたの考えを800字以内で述べなさい。 ただし,原則として1マスを1字と数えるが,英単語については,1マスに記入する文字数を適宜判断してよい。
    [採点のポイント]
    • 問題の論点を的確に捉えているかどうか。
    • 適切な例文を提示し,自分の考えを明確に説明しているかどうか。
    • 文章が論理的に構成され,語数制限を満たしているかどうか。
    • 句読点の使い方が適切かどうか,また,誤字・脱字等がないかどうか。

    [解答例]
     英文を日本語に翻訳する場合の難しさは,できる限り短い文章で表現し, 同時に自然な日本語に訳せるかどうかにあると思う。 逐語訳するとぎこちない文章になるので,より豊かな想像力や日本語表現能力が必要となる。 文法や語法に精通していることは言うまでもなく,英語の背景にある歴史や社会情勢に関する知識も必要となる。 そういう理由で,私たちが中学・高校で学んだ基礎的な英語力を駆使して,英語で書かれたものを日本語に置き換えて明確に表現したつもりでも, その文章には物足りなさが残ってしまう。
     また,第三者にすんなりと理解してもらえる文章の作成には,一層頭を働かせなければならない。 例えば,洋画の字幕を見ると,かなり意訳してある。 これは,字幕制作者が登場人物の心情の変化を察して発想を膨らませ,映画を鑑賞する観客の視点に立った訳を優先させたからであろう。 他言語を日本語に訳す作業が難しいことを痛感させられる。
     「良い翻訳とはどういうものか」という質問については,課題の例文[B′][C′]との比較から考えたい。 「親譲りの無鉄砲」という表現を英語に訳すのは難しい。Turney氏は ‘my inherent recklessness’ と短く表現し,主人公の性格を明確に伝えている点は素晴らしい。 他方,日本語母語話者であるSasaki氏は ‘having a rash, daring spirit’ と分詞構文を使い, しかも同格を用いて ‘spirit’ を説明している。彼は日本人気質を2語で伝えるのは難しいと判断したに違いない。 この長い英文に多少ぎこちなさを感じる者もいるだろうが,主人公の性格は[B′]よりも分かりやすい。 翻訳において原作者の主張を簡潔に伝えることは至難の業である。[B′][C′]と の比較から,文章が長くても,訳者の苦労の跡が見られる豊かな表現力を含んだ訳は良い翻訳と考えたい。 ただし,良い翻訳をしようとして誤訳,迷訳になっては困る。


    英語リスニング 
  3. 生活科学科食物栄養専攻
    小論文
    [課題]
     現代社会におけるライフスタイルの変化によって生活習慣病が急増してきました。生活習慣病を予防するための身体運動の効果について,次の語句を参考にし て800字程度で述べなさい。解答に際しては,すべての語句を使用しなくてもかまいません。

    交通機関   運動不足   心機能    血液   酸素

    筋力   廃用性萎縮   エネルギー消費   ストレス

      (注:廃用性萎縮とは,持っている機能が使われないと衰えていくこと。)
    [解答例]
     現代社会では,交通機関の発達や産業構造の変化に伴い,日常生活の様式が機械化され, 私たちは身体を使う必要が極端に少なくなった。 そのような状況の中で,健康を維持するためには,身体運動が重要な問題になってきている。
     生活が便利になればなるほど,多くの人が運動不足におちいり,心臓の活動を低下させることになる。 それが続くと,心機能が低下し,全身へ送り出される血液の循環にも悪影響があらわれ,血行不全となる。 十分な血液が全身に行き渡らなければ,各細胞が酸素欠乏状態になる。 酸素は骨格筋を動かすために必要であり,酸素欠乏は骨格筋の動きを低下させ,それによって筋力・持久力ともに低下する。 また,運動不足は骨格筋運動の低下でもあり,筋萎縮をもたらすことが考えられ,極端な場合には歩行障害をも起こしかねない。 さらに,運動不足はエネルギー消費量の減少をももたらす。 エネルギー消費量が減少しているにもかかわらず通常の栄養補給をしていれば,糖分・脂肪の分解に支障をきたし, 糖尿病,肥満,余剰脂肪の血管壁への付着等で,高血圧や動脈硬化等の生活習慣病を引き起こしかねない。
     一方,運動の効果としては,エネルギー消費が高まるだけでなく,多くの栄養素の要求量も増大し,体内代謝が活発になる側面がある。 また,体の予備力を増加させ,体の環境変化などに対する適応力や抵抗力を高めるとともに,積極的な健康体をつくり,老化現象を遅らせたりする。 加えて,現代社会はストレスの社会とも言われ,精神的に病んだ人々もいるが,そのようにならないためにも,身体運動はストレス解消の一助にもなる。
     このようなことから,適切な運動は健康維持のために,また,生活習慣病にならないためにも重要である。
     

  4. 生活科学科生活科学専攻
    小論文
    [課題]
     「食の安全」を確保するために消費者や生産者,政府などがさまざまな取り組みをおこなっています。このことについて, あなたが知っていることをもとにして,自分の見解を具体的に述べなさい。(800字以内)
    [採点のポイント]
    1. 解答全体の論理に一貫性があること
    2. 自分の見解が述べられていること
    3. 「食の安全」の確保に関する記述が含まれていること

    [解答例]
     生産者とは, 消費者に商品や製品といった生産物を提供する活動を担う人たちであり, 農畜産業従事者や工場で働く労働者などがこれにあたる。 生産者は,生産にあたり,日本国内の法律等で定められた安全性の基準を守らなければならない。 例えば,食品の生産・製造に関しては,多くの場合, 保存料,酸化防止剤,着色料,甘味料,発色剤,漂白剤や香料などが使われているが, それらの使用量や表示は法律で許可された範囲内であることが求められる。 遺伝子組み換え作物を使用した商品である場合には,そのことを商品パッケージに明示することなどが求められる。 さらに,近年ではアレルギー表示が,そば・小麦・卵・落花生・乳に義務付けられている。
     生産者が利益だけを優先すると,衛生管理の不徹底や過剰な添加物の使用などで, 身体や生命に危険を及ぼすような事件・事故が発生することもある。 「食の安全」を確保するための生産者側の取り組みとしては,社会に対する責任を明確にし, 法令遵守(コンプライアンス)を徹底することにより, 消費者の信頼を得ようとしている。また,農畜産物の生産では生産履歴(生産者名, 使用した化学肥料や化学飼料とその期間など)を消費者に明示できる体制を整えつつある。 消費者は,食品や食品表示に対する知識を増やし,自分の目で商品の品質を確かめるなどの対応をとることが必要である。 また,「地産地消」や産地直送の食糧を手に入れることで生産者の顔が見える関係を築くことなども試みられている。 なお,食品の品質管理を生産者にだけ任せておくと,食品の偽装表示問題などが発生することもある。 消費者は食品に記された表示を頼りにその安全性を確かめるしかなく,生産者よりも情報収集の面では不利な立場にある。 したがって,生産者が安全な食品を製造・販売しているかどうかを監視する政府の役割が強く求められる。


  5. 第一部商経学科(推薦・社会人)
    小論文  
    [課題] 次の文章A,Bを読んで,後の問いに答えなさい。

     A
     格差という言葉は,直接の意味としては大きな差ということです。 格がちがうと言えるほどの大きな差。その表現法にはふた通りのものがあります。 所得格差とか賃金格差などのように,何についての格差かを表現するものと,男女格差,地域格差などのように,何の間での格差かを言うものとです。 ふたつを合わせて男女間昇進格差のようにも言います。
     さきほど「直接の意味としては」と限定しました。それはなぜかと言えば,格差とは格の違いを感じさせるほどの大きな差のことと言ってみても, その大きさがどれくらいなら格差に当たるのかなど,大きさの意味が,はっきりしていないからです。
     この点の結論を先に言えば,どれくらいの大きさの差かという点ではなく,どんな性質の差かということが焦点です。 個々の主体の努力では埋めにくいような差と言えます。どうして埋めにくいかの原因はさまざまですが, もっとも強力なものは制度の作用でしょう。制度が努力の場や,努力の機会や,努力の成果の評価を制約してしまうという作用です。
        (中略)
     注意すべきことは,格差には格差を拡大する作用があるということです。たとえば,月収の差よりも,貯蓄能力の差のほうが大きいのがふつうです。 貯蓄額の差は,借金能力の差に拡大される。五百万円を借りるのが限度という家計と二千万円借りてもなんとかやれるという家計では, 手に入る住宅の資産価値がまったくちがう。いままでの家を売って新しい家を買うときには,その差は,もっと拡大することになってしまいます。
    (岸本重陳『新版 経済のしくみ 100話』より)
     B
     職業,能力,労働時間,運などによって,収入の多い人もいれば,少ない人もいます。 もしすべての人の所得が,能力や努力とは無関係にまったく均等だとすれば,人一倍働く人,あるいは人一倍努力する人はいなくなり, 社会の活力はおのずから低下することになるでしょう。すべての人が聖人君子でないかぎり,所得分配におけるほどほどの不平等は, 経済の活力を維持するための必要悪(?)のひとつなのです。
    (佐和隆光『豊かさのゆくえ』より)


    問1 今の日本でもっとも重大な格差は何だと思いますか。そう考える理由とその格差の問題点を明示して,あなたの考えを述べなさい。

    問2 問1であなたが答えた格差を解決するには,どうしたらよいと思いますか。解決策を提案しなさい。

    [採点のポイント]
    問1
     文章A,Bでは,それぞれ格差について異なった立場からの意見が示されている。 採点にあたっては,自らが最も重大であると考える格差を示し,二つの意見の違いに配慮しながら, 自らが示した格差がいかなる意味で最も重要であるかを説得的に示せているかどうかを重視する。
    問2
     問1で記述した格差が生じる理由を考えた上で,適切な解決手段(解決主体や解決の方策)が述べられているかどうか, また,その対策の有効性やその他の対策を行うことでの問題点などについて,論理的に記述できているかを重視する。

    [解答例]

    問1 (配点50点)
     私は,今の日本でもっとも重大な格差は地域間格差だと考えます。
     そう考える理由は,住民の努力の差以上に,経済的にも,社会的にも,有利な地域はさらに有利に, 不利な地域はさらに不利になる悪循環に陥っていると思うからです。 また,地域間格差の拡大は,不利な地域の住民だけでなく,有利な地域の住民にも,悪影響を与えることになるので, これこそがもっとも重大な格差だと思います。
     地域間格差の問題点には,住んでいる地域によって,本人の努力に関係なく,送れる生活に極端な差が生じてしまうということがあります。 特に,教育や福祉といった生活の基礎的な面で,住む地域によって受けられるサービスに大きな差が生まれてしまうことは, あってはならない不公平だと思いますが,夕張市のように,その基礎的な公共サービスの提供さえも危ぶまれている地域があります。 また,地域間格差の拡大は,過疎の地域に根づいていた貴重な文化を失わせたり, 大気汚染などの都市問題を悪化させたりする可能性があります。 これらは,日本全体にとっても大きな損失だと思います。

    問2 (配点50点)
     地域間格差の解消のために何よりも重要なのは, どこに住んでいても,一定水準以上の生活が送れるようにすることだと思います。 特に,基礎的な公共サービスは確実に提供されなければならないと考えます。 そして,その基礎的な公共サービスを提供する上で,もっとも重要な役割を果たしているのは地方自治体です。
     しかし,地方自治体が,地域住民の生活を第一に考えて行動するとは限りません。実際に,無駄な公共事業をして,財政危機になっている自治体もあります。
     そこで,すべての地方自治体が,基礎的な公共サービスを確実に提供できる財源を得られることと, 自分たちの無駄遣いで生じた負担は自分たちで全部背負わなければならないことが両立するように, 地方自治体の財源に関する制度を改革するか,新しい制度を作ることを提案します。 もう一つ,大規模な公共事業などを地方自治体が行う場合には,住民投票を義務付けることを提案します。 これが実現すれば,必要のない公共事業などによって,地方自治体が財政危機になることを防げると思います。


  6. 第二部商経学科(特別推薦)
    小論文  
    [課題]
     近年,地域社会における人間関係が希薄化している。 内閣府の『平成19年度版国民生活白書』は,住民同士の近隣関係が総じて浅く,地域活動へ参加する人が少ないなど, 地域のつながりが希薄化していることが分かったと報告した。白書は,地域のつながりの希薄化が, 地域生活の充実感の喪失,治安の悪化,出生率の抑制,地域の教育力の低下,地域の福祉機能の低下などを生み出しているとして, 地域のつながりの再構築を提起している。 その手段の一つが,住民のNPOやボランティア,地域活動への参加を通じた地域のコミュニケーション作りである。
     次の図1と図2をみて,人々の地域活動等への参加を促すためには,どのような具体策をとればよいか,あなたの考えを述べなさい。

    【図1,図2は, [問題用紙]( 113KB) を参照してください。】

    [採点のポイント]
    • 図1から,社会貢献をしたいと考える人の割合が増加していることを読み取っているか, さらに図2で示された不参加理由から,不参加問題は,参加意識の問題でなく,参加のための条件の整備問題であるということが理解できたかを,評価する。
    • 図2に示された地域活動等への不参加の理由に対して,その社会的背景などを含めた考察を行った説得力ある解決策が提起されているか (解答例は,時間,興味,きっかけ,情報,魅力的団体の有無の5つの理由をまとめてとりあつかっている。), または,個人の体験に基づき解決策が具体的な内容になっているか,等を評価する。

    [解答例]
     図1は,社会貢献をしたいという人が増大傾向にあり,今日6割に達していることを示している。 つまり,一般的に地域への社会貢献意欲も増大していることが示されているといえる。 したがって,改善すべき点は,一人一人の社会意識の育成をはかるということよりも,参加に際しての条件作りであると考えられる。 図2は,この条件作りへの問題を示しており,参加時間の確保の困難性や,参加するきっかけや情報の不足,魅力ある参加対象の不足などの問題が障害となって, 人々が地域活動に参加するに至っていないことを示している。したがって,このような潜在的な意欲を現実化するための対策として, (1)参加時間の確保, (2)地域情報の提供によるきっかけ作り, (3)魅力ある活動や団体の創造といった課題の解決が必要であることが分かる。
     それぞれの課題を少し具体的に考えると,以下のような対策となる。
     (1)参加時間の確保については,労働時間の短縮,休日出勤などの抑制など職業生活の在り方を変えていく必要があり, 企業中心主義社会と言われる日本の社会が持つ問題に挑戦していく必要がある。 企業体質の改善などといった社会全体の課題でもあり,なかなか大きな課題となるが, 月1回は地域の日といったスローガン作りで社会意識を変えていくなどの身近な対策も考えられる。
     また,地域活動への参加形態を検討し,住民の様々な生活条件にあわせた柔軟な参加条件作りの検討などが必要である。
     (2)地域情報の提供については,地域のミニコミなど地域情報紙の充実,時間のない人を想定したITを利用した地域ネットワークづくりなどが考えられる。 市町村,町内会,地域メディアなどが主体となって,地域の諸団体,諸活動の取り組みを紹介するなどの取り組みを進めることが求められる。
     (3)住民の地域参加のニーズを知る取り組みが必要である。それに加えて必要なのは指導者養成である。 子育て,介護,健康,IT,趣味,その他の生涯学習など,適切な相談者や指導者を確保すれば,参加する意欲は増すと思われ, 自治体はこのような人材育成や団体活動の補助を図っていく必要がある。 地域にある高等教育機関や図書館,公民館などの協力やNPOやボランティア団体などの交流と協力も大切である。 また,種々の団体の運営方法などの民主的運営などにも配慮が必要である。



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